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腹痛

 腹痛とは?

腹痛とはお腹が痛むことですが、腹痛で重要なのは痛みの特徴を把握することです。

腹痛を感じた際は、いつから痛みが始まったのか?どのような痛み方か?(急に痛くなったのか、じわじわと痛みが強くなったのか、痛みの強さはどうか、痛む場所はどこか、など)を覚えておきましょう。

一般的に、急激な腹痛の場合、緊急性の高い病気が隠れている可能性があり、注意が必要です。
反対に、慢性的な腹痛は、比較的症状が軽い場合が多い傾向にあります。日常生活に支障をきたすような腹痛がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

こんな腹痛の症状はございませんか?

  • みぞおち周辺に鈍い痛みがある
  • お腹が張るような痛み
  • お腹を押すと強く痛む
  • 食後にチクチク痛む
  • 下痢と便秘を繰り返す腹痛
  • お腹がグルグル音が鳴って、腹部全体が痛い

緊急性が高い腹痛

  • 急に起こる腹痛
  • 腹痛が次第に強くなる
  • 耐えられないほどの腹痛
  • 6時間以上持続する腹痛
  • 腹痛以外に、吐き気・嘔吐・発熱・冷や汗・胸痛・吐血・下血・意識低下などの症状がある

急な腹痛(急性腹痛)を起こす疾患

胆石症

胆石症は、胆嚢に石ができる病気で、特に40代から50代の女性に多くみられます。胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵する袋状の臓器です。この胆嚢にできた石が、胆管を詰まらせたり、胆嚢自体を炎症させたりすることで、右の上腹部(みぞおちの少し右上)に激しい痛みを感じます。痛みだけでなく、吐き気や嘔吐、発熱、黄疸などの症状を伴う場合もあります。

アニサキス症

生の魚介類を食べた後、アニサキスという寄生虫が胃や腸に入り込み、激しい腹痛を引き起こすことがあります。アニサキスは、魚介類に寄生する体長約15ミリの白い糸状の寄生虫です。

アニサキス症は、アニサキスが寄生する部位によって、胃アニサキス症と腸アニサキス症に分けられ、それぞれ症状が異なります。

胃アニサキス症

胃アニサキス症は、アニサキスが胃の壁に食い込むことで起こります。

アニサキスに寄生された魚介類を食べた後、3~4時間ほどで、みぞおちの激痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
胃カメラで治療することが可能です。

胃カメラ検査について
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腸アニサキス症

腸アニサキス症は、アニサキスが腸に寄生することで起こります。

アニサキスに寄生された魚介類を食べた後、10時間~数日後に、激しい下腹部痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状が現れます。

まれに、腸閉塞や腸穿孔といった重篤な合併症を引き起こすこともあります。

胃・十二指腸潰瘍

胃十二指腸潰瘍は、空腹時や夜間に強くなる傾向があり、上腹部右側などに焼けるような痛みや、鈍い痛みを感じます。
ピロリ菌への感染やストレス、鎮痛剤の常用などが原因で、胃や十二指腸に慢性的な炎症が起こるためです。

炎症により胃粘膜の防御機能が低下すると、胃酸によって組織が消化され、潰瘍が形成されます。
症状としては、痛みのほか、出血を伴うこともあり、その場合は黒色の便が出ることもあります。

胃・十二指腸潰瘍について
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急性膵炎

急性膵炎は、膵臓から分泌される酵素が、なんらかの影響で膵臓や周辺組織を消化してしまい炎症を起こす病気です。

最も多い症状は、みぞおちから左脇腹に強い痛みです。胆石症や多量飲酒が原因となることがあります。
急性膵炎は、膵臓を休める必要があるため点滴を行い、軽症でも入院となります。膵臓の炎症がひどく壊死がある場合には、手術による外科的治療を行います。

慢性的な腹痛(慢性腹痛)を引き起こす疾患

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の内側の粘膜に炎症と潰瘍が生じる慢性の炎症性腸疾患です。

主な症状は持続的な下痢、腹痛、および血便であり、病変は通常直腸から始まり、連続的に広がります。

原因は不明ですが、遺伝的要因、免疫系の異常、環境要因が関与していると考えられます。治療は主に薬物療法、食事療法、必要に応じて外科的治療が行われます。

潰瘍性大腸炎について
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クローン病

クローン病は、消化管のどの部分にも炎症を引き起こす可能性のある慢性炎症性腸疾患(IBD)で、口から肛門までのどの部分にも炎症が生じる可能性がありますが、特に小腸の終末部(回腸)と大腸に多く発生します。

腹痛、下痢、体重減少、発熱、貧血などの症状が現れ、消化管の全層に炎症が及ぶため、瘻孔や狭窄を形成することもあります。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、消化管に構造的な異常が認められないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感が慢性的に現れる機能性消化管疾患です。

症状は腸の運動や感覚の異常によって引き起こされ、下痢型、便秘型、混合型のいずれかに分類されます。ストレスや食事内容、腸内細菌のバランスが影響を与えることが多く、症状の改善には生活習慣の見直しや薬物療法、心理療法が有効とされています。

大腸憩室炎

大腸憩室炎は、大腸の壁にできる小さな袋状の突出物(憩室)に炎症が起こった状態です。

主な症状は腹痛、発熱、便秘または下痢であり、左下腹部に痛みが集中することが多いです。原因は憩室内に便や細菌が溜まり、炎症や感染を引き起こすことです。

治療は抗生物質の投与や、重症例では手術が必要となる場合もあります。

腸閉塞

腸閉塞は、腸の一部が物理的に詰まり、内容物が通過できなくなる状態です。主な症状は腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満、便やガスが出ないことです。

原因には腸の癒着、ヘルニア、腫瘍、腸捻転などが含まれます。治療は通常、絶食と点滴による支持療法を行い、重症例や改善が見られない場合には手術が必要です。

慢性膵炎

慢性膵炎は、膵臓の持続的な炎症によって膵組織が破壊され、繊維化が進行する疾患です。

主な症状は上腹部の持続的な痛み、体重減少、脂肪便で、飲酒や特定の遺伝的要因がリスクを高めます。治療は痛みの管理、膵酵素の補充、食事療法を中心に行われ、重症例では手術が必要となることもあります。

膵臓がん

膵臓がんは、膵臓の細胞が異常増殖し腫瘍を形成する悪性疾患です。
初期症状はほとんどなく、進行すると黄疸、腹痛、体重減少、食欲不振が現れます。リスク要因には喫煙、慢性膵炎、糖尿病、家族歴などが含まれます。

治療は手術、化学療法、放射線療法が主に行われ、早期発見が予後に大きく影響します。

膵臓がんについて
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部位別で分かる腹痛の原因とは?

心臓や肺など、さまざまな病気のサインとして現れる腹痛。

その原因は、消化器、泌尿器、婦人科系、血管、筋肉、腹膜など、お腹の中のあらゆる臓器が関与しています。
そのため、多くの病気で腹痛を伴うことがあり、痛みの部位や程度、性質、また、それに伴う症状から、原因となる病気を推測できるのも腹痛の特徴です。

ここでは、消化器疾患における腹痛について詳しく解説していきます。

みぞおちの痛み(心窩部痛)

みぞおちの痛みは医学用語で心窩部痛と呼ばれ、食道、胃、十二指腸、胆嚢、膵臓、横行結腸、大動脈、心臓など、さまざまな臓器が原因となって起こります。

例えば、虫垂炎は初期には心窩部痛として現れることが多く、子宮附属器炎も心窩部痛で発症することがあります。
また、注意が必要なのは、心筋梗塞などの心臓の病気でも、胸の痛みではなく心窩部痛として現れる場合があります。

原因となる疾患

心窩部痛を引き起こす病気は多岐に渡り、消化器疾患だけでも、以下のようなものがあります。

  • 胃潰瘍
  • 急性胃炎
  • アニサキス症
  • 胃がん
  • 機能性ディスペプシア
  • 十二指腸潰瘍
  • 逆流性食道炎
  • 胆石胆嚢炎
  • 総胆管結石
  • 虫垂炎(初期)

など

右上腹部の痛み(右季肋部痛)

右上腹部痛は、胆嚢、十二指腸、肝臓、腎臓、肺などの臓器が原因となって起こる可能性があります。

原因となる疾患

右上腹部痛を引き起こす病気には、以下のようなものがあります。

  • 胆石胆嚢炎
  • 十二指腸潰瘍
  • 尿管結石
  • 肝周囲炎
  • 急性肝炎
  • 胸膜炎

など

 

左上腹部の痛み(左季肋部痛)

左上腹部痛は、胃、膵臓、脾臓、腎臓、肺といった臓器で何らかの異常が起こっている可能性があります。

原因となる疾患

左季肋部痛の原因は以下のことが考えられます。

  • 胃潰瘍
  • 胃炎
  • 大腸憩室炎
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
  • 急性膵炎
  • 尿管結石
  • 胸膜炎

など

 

右下腹部痛

右下腹部に痛みを感じる場合、大腸、小腸、子宮、卵巣、尿管、膀胱など、さまざまな臓器が考えられます。

一般的に虫垂は右下腹部にあるため、虫垂炎では右下腹部に痛みが生じます。

しかし、妊娠などにより虫垂の位置が変化している場合は、右下腹部以外の場所に痛みが現れることもありますので注意が必要です。

原因となる疾患

右下腹部痛の原因は、消化器疾患の中では以下のようなものがあります。

  • 虫垂炎
  • 大腸憩室炎
  • 急性腸炎
  • 便秘
  • 大腸がん
  • 過敏性腸症候群

など

 

左下腹部痛

左下腹部痛は、大腸、小腸、子宮、卵巣、尿管、膀胱など、さまざまな臓器が原因で起こる可能性があります。
大腸憩室は、上行結腸とS状結腸に多くみられます。そのため、憩室炎になると、右下腹部から側腹部、または左下腹部に痛みが生じることがあります。

原因となる疾患

左下腹部痛はさまざまな臓器の疾患が原因で腹痛を生じます。

  • 大腸憩室炎
  • 急性腸炎
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)
  • 虚血性腸炎
  • 便秘
  • 大腸がん
  • S状結腸軸捻転
  • 過敏性腸症候群

など

 

 臍部痛

おへその周囲に痛みを感じるとき、考えられる臓器は多岐に渡ります。

胃、十二指腸、小腸、大腸といった消化器官はもちろん、胆管、膵臓、さらに子宮や卵巣などの婦人科系、そして大動脈も原因となり得ます。

原因となる疾患

臍部痛の原因は以下のようなことが考えられます。

  • 虫垂炎初期
  • 急性腸炎
  • 胃潰瘍
  • 胃炎
  • 腸閉塞
  • クローン病
  • 急性・慢性膵炎
  • 膵がん

など

 

下腹部痛

下腹部に痛みを感じるとき、原因として考えられる臓器は、大腸、小腸、子宮、卵巣、尿管、膀胱など、さまざまです。

原因となる疾患

(右)下腹部痛を引き起こす病気には、以下のようなものがあります。

  • 虫垂炎
  • 大腸炎
  • 憩室炎
  • 過敏性腸症候群
  • 便秘
  • 腸閉塞
  • 大腸がん

など

 

腹痛の診断・検査方法

血液検査

血液検査では、炎症や貧血の有無をチェックします。
炎症反応が見られる場合は、感染症が疑われます。

また、肝機能や腎機能を調べることで、尿管結石や胆石、胆嚢炎などの可能性を探ることができます。

尿検査

泌尿器科の病気では、尿検査が非常に重要です。

尿管結石症など、尿路系や腎尿管膀胱系の病気が原因で痛みが生じている場合、尿中に赤血球や白血球が認められることがあります。また、前立腺がんなどでは、尿に血液が混じることがあります。

超音波検査

消化器系の病気が疑われる場合は、超音波検査を用いて消化管のむくみ、胆のう結石、腹水の有無を調べます。
泌尿器系の病気が疑われる場合は、尿管、膀胱、前立腺などを確認します。

また、大動脈の状態を把握することも可能です。
超音波検査は、体に負担が少なく、かつ多くの情報を得られる有用な検査です。

レントゲン検査

腹部のレントゲン検査では、腸内のガスや便の状態を把握することができます。また、尿管結石が疑われる場合には、結石の大きさや位置を特定できる場合があります。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

上部消化管内視鏡検査では、逆流性食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、アニサキス症、ピロリ菌感染などを診断できます。

また、粘膜を直接観察できるため、胃がんや十二指腸がんの早期発見にもつながります。

胃カメラ検査について
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CT検査

他の検査で原因が特定できない場合や、特定の病気が疑われる場合に、より詳細な情報を得るためにCT検査を行います。

CT検査では、膵臓、肝臓、胆道、腎臓、脾臓、腹部大血管などを詳しく調べることができます。

また、レントゲン検査では判別しにくい尿管結石も、CT検査でははっきりと確認できます。このように、CT検査は腹痛の原因を特定するために非常に重要な検査です。

腹痛が起きた時の直し方・対処法

腹痛の治し方は、原因によって異なります。そのため、「この方法で必ず治る」という答えはありません。
一般的に行われる対処法や、病院を受診すべきサインなどを知っておくことで適切な判断をするようにしましょう。

自宅でできる対処法

お腹が痛くなったときは、まずは安静にして体を休め、温かいタオルなどで腹部を温めると良いでしょう。
ただし、炎症がある場合は悪化させる可能性もあるので注意が必要です。また、消化器官を休ませるために食事は控え、脱水症状を防ぐためにこまめに水分を補給しましょう。これらの応急処置を行っても痛みが改善しない場合は、医療機関を受診することをおすすめします。

病院を受診すべきサイン

    • 痛みが非常に強い
    • 痛みが長引く
    • 高熱がある
    • 吐き気や嘔吐が続く
    • 血便が出た

など

これらの症状がある場合は、お早めにご相談ください。